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CCSとは?仕組みやメリット、課題、国内外の取り組み状況を解説

カーボンニュートラルの実現に向け、二酸化炭素(CO2)の排出を抑える技術が注目されています。その中でも、CO2を回収して地中に貯留する「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)」は、火力発電や工場などからの排出を大幅に削減できる有望な手段とされています。
世界各国ではすでにCCSの導入が進められており、日本でも政府が本格的な事業化に向けた計画を進めています。2023年には「CCS長期ロードマップ1」が策定され、技術開発やインフラ整備、国際協力が重要視されています。
本記事では、CCSの基本的な仕組みやメリット、導入における課題、さらに国内外の最新の取り組みについてわかりやすく解説します。

CCSとは?カーボンニュートラル実現の鍵となる技術

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにすることを指します。化石燃料を使用することでCO2が排出される一方、森林の吸収や技術による除去を活用することで、全体の排出量を相殺する考え方です。
この概念が注目されるようになった背景には、地球温暖化の深刻化があります。産業革命以降、人間の活動によって排出されるCO2の量が増え、気温上昇や異常気象の発生を引き起こしています。そのため、多くの国が温室効果ガス削減に向けた目標を掲げ、再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進に取り組んでいます。
日本政府も、2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。そのためには、エネルギー転換だけでなく、排出されたCO2を回収・貯留する技術の活用が不可欠です。そこで、注目されているのがCCSの導入です。

CCSとは

CCSとは、Carbon dioxide Capture and Storageの略で、発電所や工場などから排出されるCO2を回収し、地下に貯留する技術のことです。これにより、大気中に排出されるCO2の量を大幅に削減し、地球温暖化の抑制に貢献することが期待されています。
CCSの仕組みは、大きく「分離・回収」「輸送」「貯留」の3つのプロセスに分かれます。まず、CO2を火力発電所や製鉄所など排出源から分離・回収します。その後、必要に応じて圧縮した後、パイプラインや船舶を使って貯留地点まで輸送し、地下の深い地層に圧入します。適切な地層を選ぶことで、CO2は長期間にわたって安全に閉じ込められます。
現在、世界各国でCCSの導入が進められており、日本でも政府が支援するプロジェクトが始まっており、産業の脱炭素化に向けた重要な技術として期待されています。

CCS事業全体のバリューチェーン (火力発電から出てくるCO2を分離回収し、船で貯留地まで運ぶ場合)2

地球温暖化対策としてのCCSの役割

再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進だけではCO2排出削減が難しい産業もあります。CCSを活用することで脱炭素化と経済成長を両立できるため、CCSが世界各国で導入が進んでいます。
特に鉄鋼、セメント、化学工業など、CO2排出を避けられない産業にとって、排出量を削減する方法として注目されています。
さらに、CCSの活用はエネルギーの安定供給にも寄与します。化石燃料を完全に排除することが難しい現状では、CO2を回収しながら使用することで、環境負荷を抑えつつエネルギー供給を維持できます。そのため、日本を含む多くの国でCCSの導入が進められており、今後の気候変動対策の鍵となる技術といえます。

世界のCCS推進動向

近年、世界各国でCCSに対する姿勢が変化し、懐疑論から政策導入へと転換が進んでいます。特に米国では、2022年8月に成立した「インフレ削減法」により、10年間で約50兆円規模のCCSを含む投資が決定され、国内で多くのプロジェクトが進行中です。これにより、CCSは「空前のブーム」ともいわれ、国際世論にも大きな影響を与えています。
ある調査機関の報告によると、世界最大のCO2排出国である中国もCCSの推進を本格化させており、2050年までに年間20億トンのCO2貯留を目標としています。国内での開発だけでなく、他国との協力体制を強化し、技術革新を加速させています。
また、2022年には世界で61件の新規CCSプロジェクトが立ち上がり、全体のプロジェクト数は196件に達しました。今後もCCSの導入が拡大し、気候変動対策の一環として各国の政策の中心となると考えられます。

CCS事業化に向けた政府の取り組み

日本政府は、CCSを脱炭素化の重要な手段と位置づけ、その事業化に向けた取り組みを加速させています。そのために策定されたのが、CCS長期ロードマップです。

これまでの日本の取り組み

日本におけるCCSの取り組みは、北海道苫小牧市での大規模実証試験を中心に進められてきました。2012年度から2015年度にかけて実証設備を建設し、2016年度にはCO2の圧入を開始しました。このプロジェクトは、日本初の実用規模でのCCS実証試験として注目され、地域社会と連携しながら、2019年11月に累計圧入量30万トンを達成しました。現在も、弾性波探査や微小振動観測などの手法を活用し、安全性のモニタリングが継続されています。
さらに、日本政府はCCS技術の研究開発にも積極的に取り組んできました。液化CO2の輸送技術の開発や、貯留適地の調査が進められ、技術の蓄積が着実に進んでいます。こうした実証試験の成功を踏まえ、日本政府は今後のCCS事業化に向けた法制度整備や支援策の検討を本格化させています。

CCS長期ロードマップの策定と背景

政府は2021年4月に、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する目標を設定しました。こうした目標達成には、再生可能エネルギーの導入だけでなく、排出削減が困難な分野へのCCSの適用が求められます。2021年10月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、火力発電所の脱炭素化や鉄鋼・石油精製産業などの分野でのCCSの活用が強調されました。CCSは、CO2を回収して再利用するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:二酸化炭素回収・利用)とともに、日本の脱炭素政策の「鍵」となる技術とされています。
この方針のもと、政府は2022年1月に「CCS長期ロードマップ検討会3」を設立し、同年9月には「CCS事業・国内法検討ワーキンググループ4」や「CCS 事業コスト・実施スキーム検討ワーキンググループ5」を立ち上げました。これにより、政府支援の在り方やコスト低減、法制度整備の方向性が議論されるようになり、CCS事業推進に向けた議論が進められてきました。2023年には「CCS長期ロードマップ」が策定されました。

CCS長期ロードマップの目標

CCS長期ロードマップでは、計画的かつ合理的にCCSを推進し、社会コストを抑えつつ、経済や産業の発展、エネルギーの安定供給を確保することを基本理念としており、これにより日本の脱炭素化を支え、カーボンニュートラル達成を目指します。
政府は、2050年時点での年間貯留量を約1.2~2.4億トンに目標設定しました。この数値は、国際エネルギー機関(IEA)の脱炭素シナリオや日本のCO2排出量をもとに算出されたもので、この目標を達成するため、2030年までに事業環境の整備を進め、2030年以降にCCSの事業を本格的に開始する計画です。事業環境の整備には、コスト削減、国民の理解促進、海外CCS推進、法制度整備の4つの柱が掲げられている一方、CCSの導入が遅れると、2050年カーボンニュートラルの実現に必要な年間貯留量の確保が困難となるため、早期の取り組みが求められます。
今後、日本はこのロードマップをもとに、CCS事業の社会実装を進め、カーボンニュートラルの実現に向けた具体的な施策を推進していきます。
今回は、CCSの概要と、事業化に関する国内外の動向や背景を中心に紹介しました。次回は、CCS長期ロードマップで策定された、CCS事業を加速させる政府の施策について、詳しく解説していきます。

【出典・参考資料一覧】

  1. 【1】経済産業省「CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ(CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ 説明資料)」 ↩︎
  2. 【2】経済産業省「日本でも事業化へ動き出した「CCS」技術(前編)〜世界中で加速するCCS事業への取り組み↩︎
  3. 【3】経済産業省「CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ(CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ 説明資料)」 ↩︎
  4. 【4】経済産業省「CCS事業・国内法検討ワーキンググループ(2022年9月1日 第1回)↩︎
  5. 【5】経済産業省「CCS事業コスト・実施スキーム検討ワーキンググループ(2022年9月2日 第1回)↩︎