COLUMN

- コラム

自然エネルギーや環境保全などに関する様々な取り組みを解説します。

もしもの断水・停電時にも安心!自治体の防災力を高める「空飛ぶトイレ🄬」の多機能性

地震や台風、豪雨などの自然災害が多発する日本において、災害時の備えは喫緊の課題です。特に、停電や断水といったライフラインの途絶は、避難生活に大きな影響を与え、被災者の心身に深刻な負担をもたらします。そうした状況下で注目されているのが、自然エネルギーを活用し、移動が容易な「空飛ぶトイレ🄬1」です。災害時には電力と衛生環境を迅速に提供し、自治体の防災力を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。

災害時におけるトイレ問題

災害時、避難所で初期に直面する問題の一つがトイレです。トイレの数が避難者数に対して足りない場合、不適切な使用や長い行列が発生し、避難所の衛生環境は急速に悪化します。排泄物の処理が適切に行われない場合、悪臭や害虫の発生だけでなく、食中毒やノロウイルスなどの感染症のリスクも著しく高まります。水や電力の供給が停止し、洗浄や消毒が難しくなることも問題です。
また、トイレの不足は、排泄を我慢せざるを得ない状況を生み出し、尿路感染症や便秘といった健康リスクも増大させます。さらに、プライバシーや利便性が確保されないトイレ環境は、避難者の心理的負担を増大させ、避難生活の質を大きく低下させる要因となります。令和6年の能登半島地震では、死者634名のうち、避難生活の環境悪化が原因となる災害関連死が406名2と半数以上を占めており、避難生活における間接的なリスクへの対策がいかに重要であるかが浮き彫りになっています。
また、地震や台風などの自然災害が発生すると、ライフライン(電気・上下水道)の機能停止が起こり、通常のトイレが使用できなくなることも問題として挙げられます。そのため災害時には陸路が寸断された孤立地域にも迅速に輸送でき、簡単に設置できるようなトイレが必要となります。
国土交通省の基準3では、災害発生当初は避難者50人当たり1基、避難が長期化する場合には20人当たり1基がトイレの必要数の目安とされています。男女別の区分や車椅子対応の多機能トイレ、夜間照明、手すりの設置なども推奨されており、自治体の担当者はこれらの基準を満たすための調達計画や配置計画を事前に策定しておく必要があります。

災害の現場で証明された N³ エヌキューブ レストルームモデルの特長

こうした災害時の課題に対して、革新的なソリューションとして開発されたのが、NTN株式会社のN³ エヌキューブ レストルームモデルです。
NTNは、長年にわたりベアリング(軸受)で世界トップクラスのシェアを誇り、自動車や飛行機、鉄道車両、風力発電など、人命に関わる多様な装置に使用されるベアリングを開発・製造してきました。こうしたベアリングの製造・開発で培った高度な技術と経験を活かし、信頼性と品質を兼ね備えた移動型独立電源N³ エヌキューブを開発しました。
N³ エヌキューブの活用事例の中でも、特に注目されているのが水循環式自己完結型水洗トイレを搭載した「レストルームモデル」です。この水洗トイレは、排泄物を分解・浄化する処理槽を搭載しており、処理槽で使用される電力は、N³ エヌキューブが自然エネルギーから発電した電力ですべて賄われます。トイレ使用後の汚水は処理槽で分解・浄化されて再生水として循環するため、外部への排水がなく、いつも清潔な水を使用できる環境に優しいシステムを実現しています。
このモデルの最大の強みは、設置する際に電気や上下水道の工事が一切不要である点が挙げられます。インフラが整備されていない場所でも短期間で簡単に設置できるため、「置くだけで使える」トイレとして災害時に真価を発揮します。さらに、メンテナンスも循環水を年1回程度交換するだけで継続的に運用可能という手軽さも魅力の一つです。

普段使いから「いざという時」まで。さまざまな活用事例

防災設備を導入する上で、「災害設備を充実させたい」という検討の一方、「多くの災害設備は災害時だけにしか使えない」という課題は導入のハードルを高める要因となります。そういった中で、N³ エヌキューブは、平常時にも活用できる多機能性を備えることで、この課題を解決し、投資効果を最大化します。
今回は「N³ エヌキューブ レストルームモデル」における活用事例をご紹介します。

・2022年4月、三重県桑名市の多度山上公園にN³ エヌキューブがエコトイレとして設置されました。このエコトイレは、水循環式自己完結型水洗トイレの処理槽を搭載しており、トイレ使用後の汚水は処理槽で分解・浄化されて循環するため、外部への排水がありません。これにより、いつでも清潔な水を使用できる、環境に優しいトイレ環境を提供しています。また、エコトイレの外装には、N³ エヌキューブの電力で稼働するデジタルサイネージが取り付けられ、多度山のハイキングを楽しんだ方々がデジタルサイネージからクーポンを入手し、店舗で利用することで、健康づくりと経済の好循環を創出することにも貢献しています。

・2023年3月、多くの登山客が訪れる三重県松阪市の三峰山登山口にN³ エヌキューブが2例目のエコトイレとして設置されました。これは、1年を通して自然エネルギーのみで稼働するエコトイレとしては全国初の事例とされています。
このように、普段から地域住民が利用する施設として存在することで、「いざという時」に市民が安心して使える存在となり、地域全体の防災意識の向上にも繋がります。また、自然エネルギーを100%使用するため、カーボンニュートラルやSDGs(持続可能な開発目標)の実現にも寄与します。

さらに特筆すべきは、通称「空飛ぶトイレ®」と呼ばれる仕様です。これは、ヘリコプターで空輸が可能な軽量構造であることに由来し、水循環式自己完結型水洗トイレとして日本で初めてヘリコプターによる空輸に対応した仕様となっています。地震や土砂崩れで道路が寸断されたり、積雪で陸路が使えない孤立地域など、アクセス困難な場所へも迅速にトイレを届けることが可能になりました。手洗い設備も標準装備されており、衛生面への配慮も徹底されています。
この「空飛ぶトイレ®」は、2024年1月に発生した能登半島地震において、その実力がおおいに発揮されました。奈良県五條市に納品予定だった水循環式自己完結型水洗トイレを搭載した「空飛ぶトイレ®」が、五條市とNTNの協業により石川県能登町に無償貸与され、被災地での衛生問題の解決に貢献しました。この取り組みは、国土交通省近畿地方整備局研究発表会で奨励賞、関西土木工学交流発表会で優秀学術発表賞を受賞し、その有効性が高く評価されています。

移動と設置が簡単な「空飛ぶトイレ🄬」を導入するメリット

ご紹介した「空飛ぶトイレ🄬」を導入することは、多岐にわたるメリットをもたらし、地域全体の防災力と持続可能性を向上させます。
1.高い信頼性と安全性 N³ エヌキューブ
NTNは、ベアリングの製造で培った高度な技術力と厳しい品質管理基準をN³ エヌキューブにも適用しています。太陽光パネルと蓄電池を一体化した設計は、強風や震度7クラスの地震にも耐える堅牢性を備え、災害時においても安定した電力供給を可能にします。
また、電気工事や上下水道工事が不要なため、インフラが整備されていない場所や、災害現場でも短時間で迅速に設置・稼働できます。また、汚水処理を含め、専門的なメンテナンスは年に1回程度で済み、運用負担が少ないのも大きなメリットです。
2.長期的なコスト削減と環境負荷低減
ディーゼル発電機のように燃料補給の必要がなく、太陽光という自然エネルギー100%で稼働するため、燃料費の変動リスクを排除し、運用コストを大幅に削減できます。また、CO2の排出がなく、地域のカーボンニュートラル目標達成に貢献します。
3.多様なニーズへの対応と投資効果の最大化:
災害時の衛生トイレといった緊急用途に加え、公園のエコトイレなど、平常時にも幅広く活用できます。これにより、防災設備としての投資を無駄にすることなく、地域活性化や利便性向上といった日常的な便益も享受でき、設備稼働率と投資対効果が向上します。
4.地域住民の安心感
平常時から身近な場所で利用されることで、住民は災害時にN³ エヌキューブの存在と機能を認知し、「いざという時に頼れる存在」として安心感を得られます。地域住民にとっても「安心して暮らせる町」という認識が広がります。

まとめ

災害が多い日本においては、今後も様々な災害発生のシチュエーションを想定しておくことが大切です。
今回ご紹介した「空飛ぶトイレ🄬」は、孤立地域や緊急事態への対応を可能にし、災害時のトイレ対策・衛生対策への備えとして利用が広がることで、ヘリコプター輸送が可能な「空飛ぶトイレ🄬」は、地域の防災力を革命的に向上させる可能性を秘めています。
もしもの時に備えるために、今こそ防災力を高める取り組みが求められています。
本記事を通して「空飛ぶトイレ🄬」についてより知りたいと思われた方は、是非NTNまでご相談いただければ幸いです。

【出典・参考資料一覧】

  1. 【1】「空飛ぶトイレ®」はNTN株式会社の登録商標です ↩︎
  2. 【2】内閣府「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について(令和7年8月5日16:00現在)↩︎
  3. 【3】内閣府「生活環境対策(避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン(令和6年12月改定))↩︎