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- コラム

自然エネルギーや環境保全などに関する様々な取り組みを解説します。

バイオものづくりとは?バイオ研究を支える基金についても紹介

バイオものづくりは、脱炭素や資源循環を支える手段として注目され、国の大型支援も進行しています。技術革新と産業構造の変化が加速する今、本記事では2回にわたり、バイオものづくりの全体像と可能性、日本のバイオ産業の課題について解説します。前編である今回は、バイオものづくりの概要やビジネスモデル、研究を支援するバイオ基金についてご紹介します。

バイオものづくりとは?

バイオものづくりは、遺伝子技術を活用して微生物や動植物の細胞を使い、化学素材や燃料、医薬品、食品などを生産する技術です。生物の持つ代謝機能を利用して有用な物質を生み出し、遺伝子やゲノムを編集することで生産性を高めることも可能です​。

バイオものづくりの具体例と重要性

バイオものづくりの具体例として、以下のようなものが挙げられます。
高機能素材:クモの糸と同じタンパク質を微生物が生成し、高機能な衣料品を開発
海洋生分解性プラスチック:
パーム油を使い、遺伝子改変微生物によって生産された環境に優しいプラスチック
細胞性食肉:
動物の細胞を増殖させることで、比較的少ない資源で生産可能な代替肉
バイオ燃料:
植物や微生物を原料とし、石油を使わず製造する燃料
この技術は、資源循環やカーボンニュートラルの実現、食料需要の増加対応、そして持続可能な産業発展に貢献します。未来の環境課題や資源問題を解決するカギとなる技術として、今後ますます注目される分野です。

バイオものづくりが可能となるには?

近年、DNA合成やゲノム編集などの技術革新が進み、合成生物学が急速に発展しています。これに加え、ゲノム解析技術やIT・AI技術の進歩が相まって、バイオ技術とデジタル技術の融合による開発競争が激化しています​。
2020年にノーベル化学賞を受賞したCRISPR/Cas9技術により、ゲノム編集の難易度が大幅に低下しました。次世代シーケンサーの登場により、ヒトゲノム解析のコストは1億ドルから1000ドルへ、時間は10年から1日へと劇的に短縮されました。
さらに、AIを活用した学習やデータ解析により、DNA合成やゲノム編集、代謝経路の最適化が可能となり、効率的な物質生産プロセスの構築が進んでいます。これにより、機能性ポリマーや高機能材料、燃料などのバイオ製品の生産と商用化が実現できる環境が整っています。
このように、技術革新とデジタル化の進展が、バイオものづくりの可能性を大きく広げ、持続可能な社会の実現に向けた新たな産業の創出を支えています。
こうした技術革新により、高度に設計されたゲノムを持ち、物質生産性が飛躍的に向上した細胞である「スマートセル」が利用可能となりました。

バイオものづくりのサプライチェーン確立・社会実装の早期実現

日本政府は、「バイオものづくり」の分野において、「バイオものづくりのサプライチェーン確立・社会実装の早期実現1」と「バイオ由来製品の市場創出・拡大や原料安定供給に向けた対応2」の2つに向けて具体的なアクションプランを計画しました。
まず、バイオものづくりのサプライチェーン確立・社会実装の早期実現に向けて、「グリーンイノベーション基金バイオものづくりプロジェクト3」と「バイオものづくり革命推進事業4」の2つの大規模予算事業を推進しています。これにより、国内の微生物・細胞設計プラットフォーム事業者(PF事業者)と生産事業者を育成し、最終製品のサプライヤーとの連携を強化することで、バイオものづくりのサプライチェーンを確立します。
最終的には、既存製品と比較して1.2倍程度のコストでの生産を実現し、早期の社会実装を目指します。また、経済安全保障の観点から、重要技術の確保や国際連携の推進も進められています。具体的には、バイオファウンドリ拠点の整備(培養・発酵などの生産技術開発や人材育成)や国際標準化、データ共有の促進(LCA、菌株データ管理など)などが含まれます。

バイオ由来製品の市場創出・拡大や原料安定供給に向けた対応

さらに、バイオ由来製品の市場創出・拡大や原料安定供給に向けた対応として、バイオ由来製品の市場拡大にも注力し、短期的には高付加価値製品の市場化を進め、中長期的には汎用品市場への普及を図ります。市場の成長を支えるため、政府はグリーントランスフォーメーション(GX)施策や政府調達を活用し、バイオ由来製品のブランディング、消費者に選ばれる価値の訴求に取り組んでいます。さらに、バイオものづくりの発展には、安価で安定的な原料供給が不可欠であるため、その確保に向けた技術開発やルール形成も進められています。

バイオものづくりを実現するサプライチェーン

バイオものづくりのサプライチェーンは、基盤技術や生物遺伝資源情報を活用し、キーテクノロジーを有するスタートアップを中心としたPF事業者が、培養・発酵等の生産プロセスを担うプレイヤーと連携し、最終的には大企業が製品製造を行う形で構築されます。具体的には、DNA・RNA合成、ゲノム編集、データマイニングなどを担うPF事業者が、培養・発酵工程の受託製造事業者と連携し、医薬品、食品、燃料、素材などの事業会社へ製品が渡される仕組みです​。
この産業構造は、上流の微生物設計・開発と下流の培養・発酵、エンジニアリングで求められる技術が異なるため、それぞれの専門性を活かした分業が必要となります。特に、AIや自動化技術を活用するPF技術が付加価値の源泉となる一方で、目的生産物や培養手法ごとに異なる製造プロセスをいかに横断的に実現するかが課題です​。

サプライチェーンのイメージ図5

バイオものづくり産業でのビジネスモデル

今後は、PF技術に特化して生産事業者と連携する水平型モデルや、特定の菌種や生産物に特化し、垂直統合型でバリューチェーンを構築する企業も増えていくと予想されます。しかし、米国で有望とされたPF事業者が破産申請を行うなど、現時点で確立されたビジネスモデルはなく、各企業が自社の強みを活かしたモデルを模索する必要があります​。
バイオものづくりは、素材、エネルギー、食品、化学品といった幅広い分野で応用されることが期待されており、産業構造の進化とともに新たな事業機会を生み出していくでしょう。

バイオものづくりの産業構造6

2つのバイオ基金における取り組み

現在の日本では、CO2や未利用資源を活用したバイオものづくりの技術開発と実証が進められています。
2022年に採択されたGI基金の「バイオプロジェクト7」は、1,767億円を投じ、CO2を原料とするバイオものづくりの研究を支援しています。
また、2023年に採択された「バイオものづくり革命推進基金」のプロジェクトは、3,000億円を投じ、食品残渣(ざんさ)や廃棄衣料など、これまで使われてこなかった資源を原料にしたバイオものづくりの社会実証を目指しています。
これらのプロジェクトでは、物質を生産する能力を高めたスマートセルを設計・開発する国内のPF事業者や、バイオ製品を量産する事業者の育成・支援が進められています。さらに、バイオものづくりのバリューチェーン全体を見渡しながら、技術開発と実証を行うことで、バイオ由来の原料や製品を社会で早期に普及させることを目指しています。

バイオものづくりで解決可能な社会課題の例8

グリーンイノベーション基金(GI基金)の活用状況

政府はGI基金の中から総額1,767億円の予算を用い、CO2を原料にバイオプラスチックや化学品、燃料などを生産する技術開発に取り組んでおり、すでに6つの事業が採択され、国費負担総額は1,806億円に達しています9。また、この基金を活用するプロジェクトが、海洋生分解性プラスチックや接着剤原料、食品、燃料などの幅広い分野で進められています​。

バイオものづくり革命推進基金の公募状況

第一回公募では、6つのテーマが採択され、総額297億円(事業規模624億円)が投入されました。香料や繊維、農業資材など多様な分野でプロジェクトが進行しており、企業や自治体が連携しています。
第二回公募では、8つのテーマが選ばれ、約1,500億円(事業規模2,800億円)の予算で事業が進められています。バイオエタノールやバイオプラスチック、バイオディーゼル燃料、農業資材などが含まれ、食品メーカーや化学メーカー、航空会社など多くの事業者が参画しました。さらに各プロジェクトは2~3年ごとに進捗を評価し、社会実装まで伴走支援が行われます​。
第三回公募は、2024年11月に開始され、2025年2月5日に応募が締め切られました10。 採択結果は2025年5月以降に公表される予定で、詳しいプロジェクトの概要や審査結果の発表は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公式ウェブサイト11をご確認ください。

バイオものづくりの前編となる今回は、主にバイオものづくりの概要と、バイオ政策を支える2つの基金について解説しました。
後編では、2つの基金の具体的な活用事例や事業について紹介します。

【出典元・参考文献】

  1. 【1】経済産業省「産業構造審議会 商務流通情報分科会 バイオ小委員会 報告書(バイオ政策のアクションプラン)」 ↩︎
  2. 【2】経済産業省「産業構造審議会 商務流通情報分科会 バイオ小委員会 報告書(バイオ政策のアクションプラン)」 ↩︎
  3. 【3】NEDO「バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進↩︎
  4. 【4】NEDO「バイオものづくり革命推進事業↩︎
  5. 【5】経済産業省「産業構造審議会 商務流通情報分科会 バイオ小委員会 報告書(バイオ政策のアクションプラン)」 ↩︎
  6. 【6】経済産業省「産業構造審議会 商務流通情報分科会 バイオ小委員会 報告書(バイオ政策のアクションプラン)」 ↩︎
  7. 【7】NEDO「バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進↩︎
  8. 【8】NEDO「バイオものづくり革命推進事業」で6件の研究開発に着手(事業概要資料2)↩︎
  9. 【9】経済産業省「産業構造審議会 商務流通情報分科会 バイオ小委員会 報告書(バイオ政策のアクションプラン)」 ↩︎
  10. 【10】NEDO「「バイオものづくり革命推進事業」に係る第3回公募について↩︎
  11. 【11】NEDO「ホームページ↩︎