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自然エネルギーや環境保全などに関する様々な取り組みを解説します。

カーボン・フットプリント(CFP)とは?国際競争力を左右する環境指標をわかりやすく解説

近年、環境政策は環境規制を主眼としたものから、経済政策と融合した取り組みへと進化しています。例えば、EUでは2050年のカーボンニュートラルを目指し、「欧州グリーンディール1」や「EU循環経済行動計画2」などを導入し、環境技術やリサイクルの強化を通じて、経済成長と資源保護の両立を図っています。また、「EUタクソノミー3」では持続可能な経済活動の基準を明確にし、企業や投資家が環境に配慮した選択をしやすくなっています。このように、環境と経済はもはや対立するものではなく、お互いを支え合う関係へと変わりつつあります。そのような中、カーボン・フットプリント(CFP/Carbon FootPrint)が国際競争において重要な指標として注目されています。本記事では2回にわたり、CFPの重要性や国際競争力への影響、そして具体的な活用事例について、わかりやすくご紹介します。前編となる今回は、CFPの基本や重要性、温室効果ガス(GHG/Greenhouse Gas)排出量の計算方法などについて解説します。

GHG排出量算定の階層

GHG排出量は、目的に応じて「国」「組織」「プロジェクト」「製品」の4つの階層で算定されます。国単位ではパリ協定などの国際目標に沿った報告が求められ、企業などの組織はScope1〜3(排出源)に分類して排出量を算出します。プロジェクト単位では、例えば植林や再エネ導入による排出量削減効果が評価され、炭素クレジット※1 につながります。そして製品単位は、ライフサイクル全体を通じて排出量を測定し、環境に配慮した商品であるかを示す指標となります。こうした多層的な算定が、より正確で効果的な脱炭素対策につながっています。

※1 排出量削減・吸収を数値化して売買できるようにした権利または証書

CFPとは何か?

CFPは、製品やサービスがライフサイクル全体で排出するGHGの総量をCO2に換算したものです。例えば自動車1台について、原材料調達から生産、流通、使用、廃棄までの全過程で出るCO2量を数値化することで、その製品が環境にどれだけ影響するかを“見える化”できます。CFPは、環境に配慮した製品=GX製品の価値を消費者に伝えるツールとなり、環境への関心が高まる中で、環境価値を需要につなげることが期待されています。

CFPの算定方法

では、実際にCFPはどのように計算するのでしょうか。算定は「算定方針の検討」「算定範囲の設定」「排出量の算定」「検証・報告」の4つのステップで進められます。
まず「算定方針の検討」では、何のためにCFPを算出するか、どのルールを使うかを決めます。
次に「算定範囲の設定」では、原材料の調達から廃棄・リサイクルまでなど、算定対象製品のライフサイクルを構成するプロセスを明確化します。
そして「排出量の算定」で、電力消費量などの活動量に排出係数をかけて各工程のGHG排出量を計算し、最後に「検証・報告」で結果が適切か確認します。

CFPの算定方法 ①4

CFPの算定方法 ②

同じ製品であっても、算定方法次第でCFPの数値は大きな差が出ることがあります。結果に大きな影響を及ぼす算定方法の主要な論点には、以下のようなものがあります。

アロケーション製品と一緒にできる副産物にもGHG排出量をどう分けるかが重要。算定対象の主製品と、対象外の副産物にGHG排出量を適切に割り振る必要がある。
マスバランス方式環境にやさしいバイオ原料や再エネ由来の特性を、特定の製品に割り当てる手法。
バウンダリーCFPの計算対象とする範囲を決定する。対象外の範囲にある排出は、算定に含まれない。
機能単位何の単位あたりGHGを算定するかを決める。例えば「製品1kgあたり」などの単位で、比較や評価がしやすくなる。
リサイクル
リサイクルの実施によって増減するGHG排出量を、CFPに反映する。再利用の効果が結果に影響する。
カットオフ
ごく小さな影響しかないうえにデータの入手も難しい工程については、算定対象から除外する。
1次データ・2次データ
CFPの算定に使うデータには、企業固有の実測値(1次データ)と、国や業界の平均値(2次データ)がある。1次データの方が精度が高いが、取得が難しい場合もある。
再エネ証書
再エネの環境価値を購入し、それを使っているとみなした排出係数を用いる。実際の電力の出どころにかかわらず、再エネ使用として算定できる。

産業競争力に影響を与えるCFP政策のオプション例

CFPに関する政策は、企業の産業競争力にも大きな影響を与えることがあります。そのパターンには、①新たな価値基準の活用、②CFP算定の多寡に影響を与えるルール設定、③算定・報告の実効性の3タイプがあり、例えば①では、製品の長寿命化や軽量化による環境貢献を評価することで、日本企業の強みが活かされやすくなります。また②では、マスバランス方式や再エネ証書を活用すれば、大きな設備投資を行わずCFPを下げられる可能性もあります。さらに③では、日本固有の算定基準やデータを活用することで、国内企業が有利になる環境を整えることも可能です。

CFPの重要性①: GX製品の競争力との関係

GX製品やサービスは、「買ってもらう」 ことが企業戦略において重要な課題になっています。需要側企業にとってのGX製品の価値を表す指標として、製品単位のGHG排出量であるCFPは重要な役割を果たします。今、企業はGXに向けて研究や設備投資を行っていますが、それを成功に導くには、サプライチェーンの下流(小売・消費者)で環境価値が評価されることが不可欠です。CFPは、サプライチェーン全体における製品の環境価値を伝える「橋渡し役」として、競争力強化のカギを握ります。

CFPの重要性②: GHG管理の解像度の高まり

地球温暖化対策の進展とともに、GHG排出の管理は「国 → 組織 → 製品」と、より細かく算定する方向に進んできました。1990年代は国単位での算定が主でしたが、2000年代以降は企業や組織単位へ、そして2010年代前半以降は製品単位での算定が重視されています。企業はもう、全体の排出量だけでなく、製品1つ1つの排出量についても説明責任を求められる時代に入りました。CFPは、こうした高精度のGHG管理において中心的な役割を果たしています。

CFPが持つ様々な政策的意義

CFPは、GHG排出量の見える化にとどまらず、さまざまな政策目標の達成にも活用されています。例えばEUのバッテリー規則では、CFP算定の厳格なルールが、地政学的リスクの高い国からの原材料調達を減らすインセンティブとして働きます。フランスでは、EV補助金の条件として海外の特定国に対し不利な排出係数を設定し、自国・EU域内の製品を優遇することで、輸入依存度を下げています。また、EUエコデザイン規則では、製品設計段階からの環境配慮が求められ、CFPが持続可能な設計やIoTによるイノベーションを促進しています。このように、CFPはサプライチェーンリスク、エネルギー安全保障、技術革新といった幅広い分野で政策的手段として活用されています。

CFPに関するステークホルダー

企業は、取引先、投資家、政府等の様々なステークホルダーからCFPに関する要請を受けています。例えば、政府はCFPを活用した規制や公共調達を進めており、製品の脱炭素化を促しています。金融機関は、企業のGHG排出量を投資判断の材料とし、CFPの開示状況も評価対象としています。企業間では、調達先がCFPを算定しているかどうかが取引の条件になることもあります。さらに、消費者もCFPの数値や評価を参考にして購入を判断するようになっており、CFPは環境指標としてだけでなく、ビジネスの現場でも重要な役割を果たしています。

Scope3算定・排出削減におけるCFPの重要性

企業のGHG排出量は、自社だけでなくサプライチェーン全体に広がっています。この中でScope3(サプライチェーン排出量)と呼ばれる上流・下流の排出量の管理が課題となっています。特に、サプライヤー(調達先)のGHG削減努力を正しく評価するには、実際の排出量を使った1次データのCFPが重要です。逆に、平均値などの2次データでは、排出削減の成果が数値に反映されにくくなります。

2次データベースの重要性

CFPを算定する際、企業の1次データを使うのが理想ですが、すべての工程でそれを集めるのは現実的に難しい場面も多くあります。そこで活用されるのが2次データベースです。これらには国や産業ごとの平均的な排出量のデータが収録されており、多くの制度や国際ルールでも利用が認められています。例えばEUやフランスの環境規制、中国の管理システム構想でも、2次データの整備が進められています。とくに今後は、国際取引や認証を受ける際に、信頼性のあるデータベースを使うことがますます重要になってくるでしょう。

日本製の2次データベース「IDEA」

日本企業がCFPを算定する際に多く使っているのが、国産の2次データベース「IDEA(アイデア)」です。IDEAには日本の産業活動に基づいたデータが4,000件以上登録されており、国別データ数としては世界最高レベルです。すでに480社以上が導入しており、日本のCFP算定の“土台”ともいえる存在です。海外のデータベースとしては「ecoinvent」や「GaBi」なども有名ですが、IDEAは日本の実態に即したデータを提供できる強みがあります。今後、企業がグローバル市場で競争力を保つためにも、こうした高精度なデータベースの活用がますます重要になります。

CFPを活用し、持続可能な競争力を高めよう

CFPは、環境への取り組みを「見える化」するだけでなく、企業の競争力を左右する重要な要素になっています。国際的なルールや市場の変化に対応するためには、GHG排出量の正確な把握と管理、そして信頼できるデータの活用が不可欠です。今後は、サプライチェーン全体での排出量削減や、Scope3への対応も求められるようになるかもしれません。持続可能な経済成長を実現するために、CFPを積極的に取り入れ、変化に柔軟に対応していくことが重要です。
CFPの前編となる今回は、CFPにまつわる基本情報や重要視される理由、具体的な算定方法について解説しました。後編となる次回は、CFPの具体的な活用事例として、海外における取り組みをご紹介いたします。

【出典・参考資料一覧】

  1. 【1】europe magazine「脱炭素と経済成長の両立を図る「欧州グリーンディール」↩︎
  2. 【2】european commission “Circular economy action plan” ↩︎
  3. 【3】european commission “EU Taxonomy Navigator” ↩︎
  4. 【4】経済産業省「第1回 GX実現に向けたカーボンフットプリント活⽤に関する研究会(資料4 事務局資料)↩︎