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- コラム

自然エネルギーや環境保全などに関する様々な取り組みを解説します。

海外政府はCFPをどう活用しているのか?制度と規制の最新動向をわかりやすく解説

世界では、カーボン・フットプリント(CFP/Carbon FootPrint)に関する取り組みが急速に進んでいます。CFPは、製品やサービスがライフサイクル全体で排出する温室効果ガス(GHG/Greenhouse Gas)の総量をCO2に換算したもので、日本でも注目が高まっており、欧州やアメリカ、中国などの海外政府はすでに制度の導入や規制強化を進めています。例えば、EUではCFPをもとに輸入品へ追加の負担を求める仕組みや、電池製品に排出量表示を義務づけるルールなどが導入されています。こうした国際的な動きは、日本企業にも大きな影響を与える可能性があります。本記事では2回にわたり、CFPの重要性や国際競争力への影響、そして具体的な活用事例についてご紹介します。前編では、CFPについての具体的な説明や算定方法について解説しました。後編となる今回の記事では、海外政府がCFPにどう取り組んでいるのか、その最新動向をわかりやすく解説します。

産業政策としてのCFPの活⽤の拡大と戦略的なアプローチ


CFPは、もはや企業だけでなく、産業政策でも広く活用されるようになっています。例えば、EUの「バッテリー規則1」では、CFPの開示が義務付けられ、フランスでは、EVの補助金制度において、CFPの数値が補助金の対象かどうかの判断材料にされるなど、CFPが製品の評価基準として組み込まれているのです。こうした動きからも、CFPが環境政策だけでなく、貿易や経済政策とも密接に関係する重要な指標になってきていることがわかります。また、対象製品や政策のアプローチは産業構造やCO2の排出構造にも着目して戦略的に検討する必要があるとされています。

EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)とは?

EUが導入した「炭素国境調整メカニズム(CBAM)2」は、鉄やアルミなど排出量の多い製品をEUに輸入する際、その炭素排出に応じた料金(CBAM証明書)を課す制度です。目的は、EU域内での気候目標を守りつつ、輸入品の炭素価格を国内品のそれと同等にすることです。輸入事業者は製品の製造段階のGHG排出量を提出しなければならず、データがない場合は「デフォルト値」と呼ばれる不利な数値が適用され、コストが増える可能性があり、CFPの低い製品が有利になると予想されています。

EUバッテリー規則とCFP規制の強化

EUバッテリー規則では、2025年後半から、バッテリーのライフサイクル全体におけるCFPの申告が義務づけられる予定です。さらに2028年以降、一定のCFP閾値を超える製品はEUで販売できなくなる予定です。これにより、欧州のバッテリー生産拠点としての立地競争力が高まります。また、EU域内採掘率(10%以上)、や加工比率(40%以上) を定めた「重要原材料法案」なども提出されており、バッテリーの設計や生産において、より環境配慮が重視されるようになります。

EUバッテリー規則は、実態とズレる可能性も

EUバッテリー規則では、バッテリーのCFPを「電力供給1kWhあたりの排出量」で算定します。ただし、実際の使用条件やバッテリーの種類に関係なく、「年間放電回数」は固定値(例:中・大型車両=250回)として扱われます。そのため、実態に即していない数値となり、製品本来の性能が反映されにくい可能性も指摘されています。また、算定に使うデータは多くが2次データ(デフォルト値)に限定されており、企業が独自の努力で排出量を下げても評価されにくいという課題もあります。

EUバッテリー規則におけるCFPの計算方法3

EUエコデザイン規則|修理・再利用・リサイクルで選ばれる製品に

EUの「エコデザイン規則4」とは、製品の環境性能を高めることを目的に、CFPなどの情報開示を義務づける制度です。対象となるのは、家電や電子機器、家具、衣料品など多岐にわたります。製品には、修理可能性などの情報を「デジタルプロダクトパスポート(DPP)」として表示し、消費者も閲覧できるようになります。これにより、環境に配慮した製品が選ばれやすくなり、脱炭素製品の普及が進みます。一方で、情報開示のためのルールがEU域内中心で整備されているため、域外企業にとっては新たな参入障壁になる可能性もあります。

エコデザイン規則5

フランスEV補助金|CFPの数値で欧州製品が優位に

フランスでは2023年12月から、EVの補助金制度にCFPの基準が導入されました。これにより、CFPが一定以下のBEVのみが補助金の対象となり、環境性能の高い車の購入が優遇されます。この制度は、環境保護の推進と同時に、EU域内で生産されたEVの競争力強化も目的としています。実際、CFPが高いとされる中国製EVは対象外となり、補助金を受けられるモデルの多くがフランスやEU域内で生産されたものになりました。その結果、フランス国内でのEV市場において、欧州製品が優位に立つ流れが生まれつつあります。CFPが、環境政策と産業政策の両方で重要な指標となっている好例です。

政府調達|アメリカのBuy Clean政策

アメリカでは、政府が建築資材を調達する際に、CFPの低い製品を優先して選ぶ「Buy Clean」政策を導入しています6。鉄鋼やコンクリートなどの建材が対象で、製品ごとにCFPの基準値が設けられています。企業はEPD(環境製品宣言)を取得し、低排出な製品であることを証明する必要があります。米国は鉄鋼の生産に電炉を多く使っており、CO2排出が少ないため、国内産の製品が有利になります。この政策により、政府建築物の温室効果ガス排出量削減が進むだけでなく、国内産業の競争力も高まる効果が期待されています。

米国のBuy Clean政策の概要と各国の電炉量と比率7

フランスのCFPラベル義務化と国際的な制度拡大

フランスでは、消費者が製品の環境影響を知ったうえで選べるよう、CFPなどの環境情報をラベル表示することが義務づけられています。これが「AGEC法」や「気候・レジリエンス法」による取り組みです8。対象は衣料品や食品、家電など幅広く、製品のCFPやリサイクル材の使用率などがスコアとして表示されます。一方で、フランス政府が開発し、国内企業に提供するCFP算定ツールが、フランス語版のみの提供となっており、海外企業にとっては参入障壁にもなり得ます。また、原子力発電が主流のフランスでは電力排出係数が低く、輸入品に不利になるケースもあります。

このように、CFPの活用は、今や世界中のさまざまな制度で進んでいます。
これらは一部で義務化されており、企業は製品のCFPを表示・提出する必要があったり、国際的には気候関連の情報開示や脱炭素に取り組む企業連携も広がっており、CFPはサステナビリティを評価するうえで不可欠な指標となっています。

企業を取り巻くCFP対応の広がり

近年、CFPへの関心は政府だけでなく、企業や投資家、消費者などさまざまな関係者の間で急速に高まっています。とくに海外では、企業が自らのサプライチェーン全体におけるGHG排出量(Scope3:サプライチェーン排出量)を把握し、削減することが重要な課題となっています。

投資家の間では、科学的根拠に基づく目標設定(SBTi)やカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)のスコアが企業評価の材料とされており、CFPの取り組みがサステナブル投資の判断軸になっています。また、取引先企業からも、調達条件としてCFP算定や削減を求められるケースもあります。さらに消費者の中にも、環境意識の高い層がCFPなどを購買判断の一つとする動きが見られます。

このように、海外ではCFPをめぐる企業の取り組みが「選ばれる企業」になるための条件となっており、国際競争力の鍵となっています。

ESG投資とCFPへの評価の高まり

世界の投資市場では、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した「サステナブル投資」が広がっており、その総額は約30兆ドルに達しています。特に環境分野(E)の評価では、GHG排出量や削減計画、クリーンテックやリサイクルへの取り組みなどが重視されています。調査によると、投資判断における環境の比重は全体の1~3割程度で、特にGHG排出量が重視されています。これにより、企業はただ利益を上げるだけでなく、環境面での実績を示すことが、投資を受けるためにますます重要になっています。

投資判断の新基準、GHG排出量の“見える化”が必須に

金融市場では、企業のGHG排出量を評価する動きが進んでいます。CDPスコアやSBTiの認定、GRESBスコアなどが投資判断の指標となっています。例えば米国のESG投資を推進する金融機関は、投資しているすべての企業に対して、Scope1とScope2の排出量を報告するよう求めています。さらに、排出量が多い業界の企業には、Scope3も含めた詳しい報告を義務づけています。もし企業が排出量の目安を下回った場合には、その企業の気候変動対策を担う役員の選任決議に反対したり、投資を引き上げを検討する方針です。

BtoB市場で進むCFP重視の調達・販売

企業間で、CFPの低い製品を調達する動きと、販売側で販売競争が始まりつつあります。例えばドイツの自動車メーカーは、12,000社以上のTier1サプライヤーにGHG排出量データの提出を求め、選定基準にしています。また、複数の企業が参加する「SteelZero」「ConcreteZero」といった団体では、2030年までに50%、2050年までに100%ネットゼロ製品への切り替えを目指しています。こうした動きは、CFPがBtoB市場でも重要な競争要素になっていることを示しています。

BtoC市場で進む環境配慮|CFPの低さがブランド価値

環境意識の高い消費者をターゲットに、CFPの低さを訴求するブランドが注目を集めています。例えばサステナビリティを追求する衣料品メーカーは、「Don’t Buy This Jacket」というキャンペーンで修理による再利用を促し、ライフサイクル全体の排出削減をアピールしました。結果、売上はキャンペーン実施後の9か月で30%も増加しました。また大手消費財メーカーでは、CFP半減を訴求したブランドが他ブランドより69%早く成長しています。市場全体でも、食品業界のエシカル消費(環境や社会に配慮した商品選び)は2030年までに7,000億ドル以上に拡大すると予測されており、先進的な消費者は、環境性能の高い製品に追加料金(=価格プレミアム)を払ってもよいと考えています。

CFPをめぐる国際動向を正しく理解する

CFPに関する海外政府の動きは、今後の日本のビジネス環境にも影響を及ぼす可能性があります。EUやアメリカなどでは、CFPを基準に輸入制限や補助金の対象選定が進められており、日本企業にとっても対策が必要です。国際的なルールや規制の流れを正しく理解し、自社の製品やサプライチェーンの排出量を見える化することが、競争力を保つために重要になります。今後、日本も各国の政策動向に注目し、柔軟に対応していく姿勢が求められるでしょう。

【出典・参考資料一覧】

  1. 【1】European commission”EU agrees new law on more sustainable and circular batteries↩︎
  2. 【2】駐日欧州連合代表部「EUの炭素国境調整メカニズム、暫定適用開始」 ↩︎
  3. 【3】経済産業省「第1回 GX実現に向けたカーボンフットプリント活⽤に関する研究会(資料4 事務局資料)↩︎
  4. 【4】駐日欧州連合代表部「欧州委員会、家電をより持続可能なものにするべく、デザインに関する新たなルールを採択」 ↩︎
  5. 【5】経済産業省「第1回 GX実現に向けたカーボンフットプリント活⽤に関する研究会(資料4 事務局資料)↩︎
  6. 【6】Office of the Federal Chief Sustainability Officer”Federal Buy Clean Initiative↩︎
  7. 【7】経済産業省「第1回 GX実現に向けたカーボンフットプリント活⽤に関する研究会(資料4 事務局資料)↩︎
  8. 【8】EnviX「フランス AGEC法、気候変動対策・レジリエンス法 重要施行令」 ↩︎