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- コラム

自然エネルギーや環境保全などに関する様々な取り組みを解説します。

「エネルギー白書2025」とは?概要やGX、カーボンニュートラル達成に向けた日本国内の取り組みについて解説

エネルギーをめぐる国内外の情勢は、日々変化しています。こうした動きの中で、経済産業省が毎年のエネルギー動向やエネルギー施策を一冊にまとめたのが「エネルギー白書」です。
エネルギー白書2025は、正式には「令和6年度エネルギーに関する年次報告」といい、エネルギー政策基本法第11条に基づいて作成された政府の報告書です。この白書は、エネルギーの需給に関して政府が講じた施策の概要を国会に提出するもので、毎年更新されています。2004年から毎年公表されており、今回で22回目の発行となります。2025年版は2部構成となっており、第1部では2024年度のエネルギーを取り巻く状況や対策を分析し、第2部ではエネルギー需給に関する具体的な施策の実施状況がまとめられています。
本記事では、エネルギー白書20251の内容を2回に分けてご紹介します。前編にあたる今回は、福島復興の進捗やグリーントランスフォーメーション(GX)、そして2050年カーボンニュートラルの実現に向けた日本の取り組みについて解説します。

福島復興の進捗

日本のエネルギー政策全体の大きな転換点となった東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から14年が経過し、日本のエネルギー政策は大きく見直されています。現在、多核種除去設備等処理水(ALPS処理水)の海洋放出や、特定復興再生拠点区域での避難指示解除の完了、さらに特定帰還居住区域における整備の進展など、福島の復興と再生は着実に進んでいます。しかしながら、復興には中長期的な視点での対応が欠かせません。政府は引き続き、現地の実情を丁寧に把握しながら、地元との対話を大切にし、復興に向けた取り組みをさらに具体化する姿勢です。
2024年は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取り組み、帰還困難区域の避難指示解除に向けた取り組み、新たな産業の創出に向けた取り組みなどについて進捗がありました。各取り組みを解説します。

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取り組み

福島第一原子力発電所の廃炉作業では、現在は燃料デブリの取出しに着手していますが、この作業は世界でも前例がないほど技術的な難易度が高く、安全と慎重さが求められています。
2024年9月からは、2号機においてテレスコ式装置を用いた取り出し作業に着手し、廃炉に向けた工程は「中長期ロードマップ」の第3期に入りました。2024年11月には、初めての試験的な燃料デブリ取出しにも成功しています。
また、ALPS処理水は、モニタリング結果や国際原子力機関(IAEA)による評価によって安全性が確認されており、2025年2月には放出を終えたタンクの解体が始まりました。今後はその跡地に、燃料デブリ関連施設を設置する予定です。さらに、中国を含む関係国が参加するIAEAの枠組みのもと、追加モニタリングも実施されています。2025年3月には、日本と中国が水産物の輸入再開に向けて協議を進めることでも一致しました。

帰還困難区域の避難指示解除に向けた取り組み

帰還困難区域とは、将来的な居住が制限されてきた地域を指します。こうした区域のうち、特定復興再生拠点区域では、2023年11月までに福島県の葛尾村、大熊町、双葉町、浪江町、富岡町、飯舘村の6町村すべてで避難指示が解除されました。
さらに、福島復興再生特別措置法の改正により特定帰還居住区域が新たに創設され、2025年3月までに大熊町、双葉町、浪江町、富岡町、南相馬市の5市町が復興再生計画の認定を受け、除染やインフラ整備が進められています。
政府は、「たとえ時間がかかっても、すべての帰還困難区域で避難指示を解除する」との強い決意のもと、段階的かつ着実に、早期復興に向けて取り組んでいます。

新たな産業の創出に向けた取り組み

新たな産業の創出に向けた取り組みである福島イノベーション・コースト構想は、福島県浜通り地域などの産業復興を目指すものです。ロボットの実証実験施設である福島ロボットテストフィールドの整備や、各種の補助事業を通じて、新たな産業の創出に力を入れています。
2024年6月には第5回福島イノベーション・コースト構想推進分科会が開かれ、経済産業省から「浜通り地域等の復興の絵姿」が提示されました。2025年2月の原子力災害からの福島復興再生協議会では、復興庁・経済産業省・福島県が連携し、「地域の稼ぎ」「日々の暮らし」「担い手の拡大」という3つの視点を盛り込んだ改定方針を報告しました。
また、福島新エネ社会構想「加速化プラン2.0」が2024年9月に策定され、水素の社会実装を含めた分散型エネルギーシステムの推進も進められています。

GX・2050年カーボンニュートラルの実現に向けた日本の取り組み

日本のエネルギーを取り巻く環境は大きく変化しています。ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化など、経済安全保障の観点からもエネルギーの安定供給が一層求められるようになりました。さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)や電化の進展など、電力需要の増加も見込まれています。
こうした背景を踏まえ、政府は2024年5月から「エネルギー基本計画2」の見直しを進めました。この見直しは、「GX2040ビジョン3」や「地球温暖化対策計画4」と一体的に検討され、2025年2月に閣議決定されました。
こうした政策の検討の背景にある近年の環境変化と、DXやGXの進展を踏まえたエネルギー・産業政策の一例として、「電力と通信の連携(ワット・ビット連携)」によるデータセンターの国内立地加速の動きを紹介します。

日本のエネルギーを取り巻く環境変化とエネルギー安全保障の課題

世界のエネルギーを取り巻く環境が、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、大きく変化しました。中東情勢の緊張の高まりや、アメリカのパリ協定からの脱退表明なども含めて、各国がエネルギー安全保障の確保に向けて万全を期す必要がある状況です。
日本のエネルギー自給率は15.3%で、G7各国の中でも最も低い水準にあります。また、発電の約7割を化石エネルギーに依存しています。ウクライナ侵攻以降、液化天然ガス(LNG)の需給ひっ迫や価格高騰が、貿易収支にも大きな影響を与えました。
さらにDXやGXの進展を踏まえたエネルギー・産業政策が、G7各国との産業立地競争力の観点からも重要です。

DX・GXの進展と日本の電力需要の動き

エネルギー安全保障に加えて、DXやGXなどの進展に伴う電力需要の増加が見込まれており、この傾向に応じたエネルギー政策が必要です。
日本の電力需要は、省エネの効果を見込んでもなお、データセンターや半導体工場の新設などによって、今後増加していくと予想されています。2024年度から2034年度にかけて、約465億kWh、約6%増加すると試算されています。

ワット・ビット連携による電力と通信インフラの最適化と脱炭素電力の有効活用

日本がAIの活用によりDXを加速させ、経済成長と脱炭素の同時実現を目指す中で、電力需要や脱炭素電源の偏在性、リードタイム等を考慮し、効率的な電力・通信インフラの整備を通じた「電力と通信の効果的な連携(ワット・ビット連携)」の重要性が示されています。今後は、データセンターを含め、脱炭素電力などのクリーンエネルギーを活用した製品やサービスが新たな付加価値を生み出す時代になると予想されており、需要家自身が脱炭素電力を利活用・確保する動きをさらに加速する必要があります。
背景の一つとして、大規模な電力を消費するデータセンターが都市部近郊に集中しており、脱炭素電源の立地との乖離が指摘されています。また、建設のリードタイムを考慮すると、太陽光や風力などの脱炭素電源よりもデータセンターのほうが立ち上がりが早く、大規模な系統整備が必要になる場合もあります。
こうした背景のもと、2025年2月に閣議決定されたGX2040ビジョンでは、電力と通信インフラの全体最適化に向けた「ワット・ビット連携官民懇談会」の設立が示され、2025年3月には官民連携による議論・調整が始まりました。さらに2025年6月には、データセンターの効率的な整備に向けた電力と通信の効果的連携策について、今後の検討の方向性が取りまとめられました。

GXを支える次世代エネルギー革新技術の最前線

エネルギーの安定供給、経済成長、脱炭素を同時に実現し、2050年のカーボンニュートラルを目指すために、日本企業が有する次世代エネルギー革新技術への取り組みが欠かせないとされています。ここでは日本が注力する主要な次世代技術についてご紹介します。

①光電融合

光電融合は、電気信号の代わりに光信号を使ってデータ処理や通信を行うことで、大容量・低遅延・低消費電力を実現するものです。世界各国で開発競争が進む中、日本は高温耐性や長期信頼性で世界をリードしており、早期市場獲得も期待されています。

②ペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト型の次世代太陽電池も注目されています。この技術は、軽量で柔軟という特徴を持ち、耐荷重性の小さい屋根や壁面など従来は設置が難しかった場所でも利用が期待されています。製品化のカギとなる耐久性や発電効率の向上に向けた技術開発が進められ、量産体制の整備も急がれています。

③浮体式洋上風力発電

浮体式洋上風力発電では、風車を海上に浮かべて設置することで、着床式では設置が困難だった水深の深い場所でも発電が可能になります。国際的にも競争が激化する中、日本は構造設計などの強みを生かした低コストな量産化と、グローバル連携によるサプライチェーンの構築が求められています。

④次世代型地熱発電

次世代型地熱発電にも期待が高まっています。超臨界地熱発電は、発電効率の向上や大規模化が見込まれます。海外企業が先行している中、日本も実証プロジェクトの加速により、商用化に向けたノウハウの確立が急がれています。

⑤次世代革新炉

次世代革新炉(革新軽水炉・小型軽水炉・高速炉・高温ガス炉・フュージョンエネルギー)の分野では、安全性や脱炭素、カーボンフリーな熱供給などが評価されています。日本企業は必要な技術の実証に向けて研究開発を進めており、小型軽水炉では実証炉開発が、高速炉・高温ガス炉では実証炉開発が進められています。フュージョンエネルギー(核融合)では、スタートアップなどによる多様な炉型の開発が注目されています。

⑥水素などの次世代燃料

水素などの次世代燃料(水素・アンモニア・合成燃料・合成メタン)も、鉄鋼・化学・モビリティ・発電など多分野の脱炭素の鍵として期待されています。日本は「つくる」「はこぶ」「つかう」に関わる水電解装置や輸送技術、発電の多くで世界をリードしています。こうした技術の早期商用化と、国内外での水素需要の拡大が見込まれ、市場獲得の動きも加速しています。

まとめ

今回は、エネルギー白書2025の内容について、福島復興の進捗やGX、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた日本の取り組みについてまとめました。本記事の後半では、エネルギー白書2025でまとめられている主要国の中期的な温室効果ガス削減目標と動向に焦点をあて、各国の取り組みについて解説します。

【出典・参考文献一覧】

  1. 【1】資源エネルギー庁「エネルギー白書 (令和6年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2025))↩︎
  2. 【2】資源エネルギー庁「エネルギー基本計画について(第7次エネルギー基本計画)↩︎
  3. 【3】内閣官房「GX実行委員会(GX2040ビジョン)↩︎
  4. 【4】環境省「地球温暖化対策計画(令和7年2月18日閣議決定)↩︎