国交省が推進する道の駅が担う防災拠点の役割
道の駅は、地域に根ざした施設であると同時に、災害時における防災拠点としての役割が期待されています。特に、地域住民や観光客の避難先として、また救援活動を円滑に進めるための物資集積・供給拠点として重要な役割を果たします。広域的な防災拠点として道の駅の機能を強化するため、国土交通省は「防災道の駅」を選定しました。さらに、道の駅を「防災道の駅」として整備を進めるため、交付金を使って耐震化や無停電化、防災倉庫、災害用トイレ等の整備を重点的に支援していく方針です。1
このように、道の駅は防災において欠かせない地域インフラの一部となりつつあります。
地域住民の避難所としての機能
「防災道の駅」の要件には、都道府県が策定する広域的な防災計画や新広域道路交通計画において、広域的な防災拠点として位置づけられていることが求められます。また、災害時に求められる機能に応じて、建物の耐震化、無停電化、通信や水の確保などの施設や体制が整備されていることも含まれます。さらに、災害時の支援活動に必要なスペースとして、2,500平方メートル以上の駐車場を備えていることや、業務継続計画(BCP)の策定が必要とされています。これらの要件を満たした「防災道の駅」は、災害時の救援活動の拠点として重要な役割を果たすことが期待されています。
災害支援物資の拠点としての活用
特に幹線道路沿いに位置する道の駅は、広域避難や支援物資の輸送ルートとして活用しやすい特徴を持っています。例えば、東日本大震災では、多くの道の駅が物流の中継点として機能し、被災地への物資供給を迅速に行う役割を果たしました。このような実績は、道の駅を災害対応インフラの一部として強化する重要性を示しています。
これからの道の駅に求められていること
道の駅などの防災拠点には、災害時に民間のインフラが使えない状況下においても、災害対応に必要な「電力」「通信」を確実に安定・継続して供給することが求められています。エネルギーを自給できる道の駅の導入が各地で進められており、災害時でも電力供給が可能なシステムが注目されています。また、地域の地理的特徴や住民のニーズに応じ、多様な機能を備える道の駅が増加しています。このような取り組みは、地域防災力を向上させるだけでなく、観光客や地域住民の日常利用を通じた認知度の向上にもつながり、防災と地域振興の両面で効果を発揮しています。
エネルギーを自給している道の駅
自然エネルギーを活用し、エネルギーを自給自足できる道の駅は、災害時にも自立した運営が可能です。近年では太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステムを導入し、停電時でも照明や通信設備が稼働可能な体制を整えている道の駅が増えてきました。このような道の駅は、災害時に地域住民を支える重要な防災施設の一つとなっています。
災害時に迅速な対応が可能な「コンテナ型施設」
災害時の迅速な対応を可能にする防災設備として、近年では「コンテナ型施設」が注目を集めています。これらの施設は、耐久性の高い素材で作られており、地震や台風といった自然災害にも対応可能です。さらに、コンテナの特性上、輸送が容易であり、設置も短時間で行えるため、災害現場に迅速に展開できるという大きなメリットがあります。
これまでのコンテナ型施設は、主に一時的な避難所や物資の保管場所としての役割が中心でしたが、技術革新によりその機能が大きく進化しています。特に、太陽光発電や蓄電池、浄水装置を搭載したモデルが登場し、電力や清潔な水の供給が可能になりました。これにより、災害時の電力や水の不足といった課題に対応できるようになり、被災者の生活を支える重要な拠点としての役割が期待されています。
進化する「生活支援機能」を備えた新世代のコンテナ型施設
さらに冷暖房設備やインターネット環境を整えたコンテナ施設も登場しており、被災者が避難生活を送る際の快適性を向上させる工夫がなされています。これにより、長期化する避難生活においても、一定の快適な環境を維持できるようになりました。
また、災害時の緊急医療拠点や仮設住宅としても活用されています。これまでの仮設住宅は、設置までに時間がかかる課題がありましたが、コンテナ型施設は輸送が容易で設置が迅速に行えるため、より早期の支援が可能です。緊急医療拠点としての活用においても、電力供給や水の確保が可能であるため、医療機器の使用が可能となり、医療体制の確立にも寄与しています。
防災の未来を支える「包括的な防災ソリューション」
このように、災害時の多様なニーズに対応できるコンテナ型施設は、単なる一時的な避難施設ではなく、電力や水の供給、医療支援、通信環境の整備など、生活基盤を支える「包括的な防災ソリューション」としての役割を果たしつつあります。今後も技術の進化が続くことで、より高機能で持続可能な災害対応施設として、自治体や防災関連機関にとって重要な設備になると考えられます。
今注目されている「高付加価値コンテナ」の道の駅への導入
国土交通省は、柔軟な可動性を備え、従来の活用方法を超えた新たな価値を付加し、平常時・災害時に有効活用できるコンテナを「高付加価値コンテナ」と定義しました。また、道の駅において高付加価値コンテナを活用するための特徴や活用用途のイメージ、設置や移動にあたっての留意点をとりまとめたガイドラインを策定しました。2
高付加価値コンテナは、例えばトラックや牽引車両を用いて迅速に設置することが可能な「搭載型」「自立搭載型」「牽引型」の3つのタイプがあります。災害時には被災地に迅速に派遣され、避難所のトイレ、シャワー、仮設の診療所、休憩所などに活用される機能を有しています。
これらの特徴を持つ高付加価値コンテナは、道の駅の防災拠点や地域活性化のための拠点として導入が進められています。
【出典・参考資料一覧】
- 【1】国土交通省「道の駅案内」 ↩︎
- 【2】国土交通省「「道の駅」における高付加価値コンテナ活用ガイドライン」 ↩︎